2013年3月11日月曜日

椅子とそれに纏いつくもの


山頂


 ドラマは演じる舞台があって存在する。


 コトとモノの関係も、存在を認められた椅子があってこそ行われるであろう。出来事との絡み合いも、椅子を見た時の空想が現実の演技となってすでに現出している。

 時には椅子が演技者であり、それに関わるものが椅子の役をつとめる。

 椅子に絡むものは主として人間である。すでに椅子は人間がそれに座った形に出来上がっている。であるから全ての椅子に座る人の姿勢を想像することができる。




仰向く女


 椅子というものは、一応構築物で梁と柱から成り立っている。梁は水平で、柱は垂直から成り立っている。本来人体の腰掛けとしてつくられていて、背もたれや肘掛けも場合によっては付いている。やはり背もたれは垂直で、肘掛けは水平を志向している。そのような幾何学的、工学的な椅子に対していろいろな形となって関係するのが人間という有機体である。

 椅子は人間本来の尺度で出来ているが、その形から四ツ足の動物をも想像することが出来る。四本の脚は動物の脚とみることが出来るし、例えば背もたれは首から上を想定出来る。




安泰


 テーブルを中心にした親がいて、その周囲に子供である椅子が取り囲むといった想像図が描ける。

 不定形の空間の集まりである画面に椅子を一個投げ込むことで、混沌とした世界に秩序が与えられ、全ての形が整合性を持つと同時に画面の全てが確固たる色を持つようになる。




二つの椅子


 人間の形と尺度で世界を幾何学的にまとめながら、椅子は人間の生活尺度に合わせた無限の出来事を纏わせることの出来るモチーフと云える。


 椅子は人間を象徴する隠喩的な存在である。

2013年2月
島州一