2014年4月3日木曜日

Finger Print 10 1979






Finger Print 10
1979
各620×470㎜
鳥の子和紙に鉛筆、指の痕跡
青梅市立美術館蔵                
絵筆のかわりに指先を使ったペインティング。1979年当時は、私にとって絵作りだった。


















 
油土を指で壁一面に塗り付ける行為(粘土の壁)と平行して、紙の上に平面作品として指の痕跡を付けることを考えた。

 厚目の鳥の子和紙に、 2、3㎝間隔のグリッドを硬いエンピツで描き、それらの交点を中心として恣意的に左右上下を定めて軟らかいエンピツで └ ┐┌ ┘を書き入れ、それを指で摺って紙が破れ、指が紙の中に入ってしまうまで続けることで、軟らかいエンピツの粉と共に紙上に指の痕跡が出来、それらが縦横上下に揺れながら並ぶことになる。

 その制作意図は、一つのシステムの平面が、有機的に動き出す予感の様なダイナミズムを感じさせることであった。それは図と地が混然とー体になることで、表現行為と概念的平面の要求をも満たそうとするものであった。

 それまでの私の制作の方法を考える時、常に表現行為者と版と支持体のメカニズムの中で、三者を類似化、差異化してきたが、指の痕跡の作品も又同様なシステムを持つ。

 この場合、版の役目をするのは私であり、指先で、作品制作者と版はーつになっている。そして版画の支持体としての紙は、その下の机に支えられ、次に机の脚に、、、と云う支持体の循環思考のもとに、指の痕跡は机という固い支持体の上に柔らかい紙をのせたという構造でなければ成就しなかった関係を強く持つ。


 私の指という小さな自然は、他者の代表である紙という自然と接触し摩擦されることで、マイナスされながら刻印としてプラスされ、その刻印たちは余白よって支えられ、浮遊することが出来る。






















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