2014年9月23日火曜日

カフカの部屋


カフカの部屋no.5
カンヴァスに油彩


 Domestic Affairs 家事と一口に云っても、私と妻が経営するこのくらしの中で浮かび上がって来る問題は現実的であり、家族との関係が私的意識を含む生活のかたちをつくり出している。
 特に経済面を考えた時の自分に対する無力感が著しい。半世紀以上に及ぶ創作活動のプロセスに於ける経済の問題は、私の制作にかなりの影響を与えている。



カフカの部屋no.4
カフカの部屋no.6
 

 創作活動は、その活動が経済とどのように関わるかということが当面の問題となる。自分の生き方の哲学による、そこに生きている社会に対する批判や提言は、自分が自立していなくては本当の意味で価値を持たない。そのような社会の窓への第一歩が家族との関係である。


カフカの虫


 その関係が、私を取り囲む社会及び外界を規制しながら私を外側からかたちづくっている。内なる存在と外側から私を規制する構造の関係は、常にギクシャクとして整合性がなく、私の存在を不条理の鋳型に閉じ込めている。その鋳型から取り出す形が制作のモチーフとなってきた。


カフカの部屋
カフカの部屋no.2














 




タイトルはカフカの作品より採っている。作品になるカフカは私の分身として様々な不条理のかたちを見せ始める。その一点毎に様々な変身が繰り返されている。

2014年9月9日
島州一

これらの絵から、私と妻とのDomesticな関係が読めますか?

flickrはこちらから
https://www.flickr.com/photos/shimakuniichi/albums/72157632712112631


2014年4月3日木曜日

Finger Print 10 1979






Finger Print 10
1979
各620×470㎜
鳥の子和紙に鉛筆、指の痕跡
青梅市立美術館蔵                
絵筆のかわりに指先を使ったペインティング。1979年当時は、私にとって絵作りだった。


















 
油土を指で壁一面に塗り付ける行為(粘土の壁)と平行して、紙の上に平面作品として指の痕跡を付けることを考えた。

 厚目の鳥の子和紙に、 2、3㎝間隔のグリッドを硬いエンピツで描き、それらの交点を中心として恣意的に左右上下を定めて軟らかいエンピツで └ ┐┌ ┘を書き入れ、それを指で摺って紙が破れ、指が紙の中に入ってしまうまで続けることで、軟らかいエンピツの粉と共に紙上に指の痕跡が出来、それらが縦横上下に揺れながら並ぶことになる。

 その制作意図は、一つのシステムの平面が、有機的に動き出す予感の様なダイナミズムを感じさせることであった。それは図と地が混然とー体になることで、表現行為と概念的平面の要求をも満たそうとするものであった。

 それまでの私の制作の方法を考える時、常に表現行為者と版と支持体のメカニズムの中で、三者を類似化、差異化してきたが、指の痕跡の作品も又同様なシステムを持つ。

 この場合、版の役目をするのは私であり、指先で、作品制作者と版はーつになっている。そして版画の支持体としての紙は、その下の机に支えられ、次に机の脚に、、、と云う支持体の循環思考のもとに、指の痕跡は机という固い支持体の上に柔らかい紙をのせたという構造でなければ成就しなかった関係を強く持つ。


 私の指という小さな自然は、他者の代表である紙という自然と接触し摩擦されることで、マイナスされながら刻印としてプラスされ、その刻印たちは余白よって支えられ、浮遊することが出来る。






















flickr はこちらから▶Finger Print 10 1979



2014年3月16日日曜日

DRUM PAINTING を見て気づいたこと

DRUM PAINTINGDRUM PAINTING1DRUM PAINTING2DRUM PAINTING3DRUM PAINTING4DRUM PAINTING5
DRUM PAINTING6DRUM PAINTING11DRUM PAINTING12DRUM PAINTING13DRUM PAINTING14DRUM PAINTING15
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DRUM PAINTING, a set on Flickr.
1982-1985
⬆画像をクリックすると、flickr から観ることができます。



 30年以上も前の初期の油画作品 DRUM PAINTING flickr up した。
三次元から二次元に次元変換する表現形式を暗中模索している頃の作品である。今、見ると未完全であるが、私にとっては実験的な記念すべき平面作品なのである。

 DRUM PAINTING の、絵具をカンヴァスに描き付ける時、平面に塗り付ける絵具の痕跡を切れのよいスピード感のあるものにするために、あえて円筒に描き付けた。
そのタッチの方向は斜め上から左下に云わば袈裟がけに振り下ろされた。

DRUMに描き付けるところ
ドンドンと音がします



DRUM PAINTING 3



 カンヴァスが巻き付けられた円筒は上から下までタッチで描かれると、カンヴァスを横にづらして、又上から下に描いていく、といった行為の繰り返しで画面を埋め、更に縦に並んだタッチ(レーン)をなぞって、第一回目と同じドラム(円筒)の縦のラインに重ねて、又異なった色の絵具を筆で塗り付けていく。
 以上の行為は、布を織る時の構造と同じで、ドラムが縦糸であったらそこに塗り付けた絵具は横糸であることに気づいた。


 現在制作中の Tracing Shirt は正に DRUM PAINTING と同じ意識で、シャツの布地とそこにプリントされている絵柄の糸をトレースしているのだと気づいた。
 プリントされたシャツの布地は綯った糸をタテとヨコ糸で編んで布地として織られているが、更にその上に糸の色とは異なったインクで絵柄がプリントされていることで布自体の素材と色の複合された厚みが生まれている。


DRUM PAINTING 23



 平面作品を描こうとした時、何をどのように描くかということが先決である。そのため、描くということの意味が描くテーマとなった。描くことを表現するために描きつけるタッチの速さ、切れのよさをテーマにして画面の空間の広がりがダイナミックでスポーティなものになった。


参考文献
島州一のモドキレーションから▶ 支持体のシステム化=DRUM PAINTING
島州一が伝えたいことから▶ DRUM PAINTING


2014年2月18日火曜日

Tracing-Shirt 2013

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Tracing-Shirt 2013, a set on Flickr.
⬆画像をクリックすると、flickr から観ることができます。



 2013年の後半は、私にとって思いもかけないガン手術の事件があり、作家としての歴史を強く意識した年であった。

『銀河鉄道77シリーズ』  Tracing-Shirt with the Milky Way

 3.11の被災を弔う心からか、自然に父親の形見の黒いネクタイがトレーシングシャツ上に置かれ、その上に更に十字形の、死者たちが、宮沢賢治の銀河鉄道に乗って、暗い宇宙を飛んでいるというイメージで制作が始まった。

で表現したものから一転して、明るい画面になってきたのは、自分の運命にも対抗する気力を示した年でもあったからだ。


Tracing-Shirt172


Tracing-Shirt163


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Tracing-Shirt170