Tracing-Shirt 198 2015 |
万物が生れ成長変化し消滅するという存在の過程を、一瞬の一コマに書き留めることが美術である。逆に云い換えると、一つのシーンにあらゆる存在の過程を入れ込む表現。
名付けることの出来ない存在の過程を入れ込む表現、名付けることの出来ない存在の巨大な予感の空間。
モノとコト、あるいはバーチャルとリアルの関係の追求が面白く、どんな形と内容の関係が平面の次元に捉えることが出来るか、を自分が今を生きている空間の中で描き留めることが生きる目的である。
自分が見据える空間の奥行きと無限の広がりの連鎖の中で捉えようとする自分自身の表現形態。それを現実の次元を変えて二次元にする時、描写のレトリックを使う必要がある。その表現の手続きが表現のモチーフになる。
輝かしい無限の空間はシャツであり、その中にささやかに生きる私の生活空間が椅子の存在である。その自然の中で生活するスタイルを決定し、私を象徴する身代わりになる。椅子は私の存在の影としてのアイコンである。
巨大な空間の象徴をシャツで表現する為にシャツの細部とレアルな形にこだわる。
ー自然が巨大であればあるほど逆に細かくー
万物が変化して流れる一瞬を引き止め、自分の息を殺してその一瞬を描き捉える行為。
一筆ごとに立ち上げる時間の流れの凍結の瞬間の連鎖の結果、一片のシャツが紙上に実現する。
自然の変化の一瞬をとらえる為の、自分という自然の凍結の連鎖は、私の肉体にダメージを与えた。
机上に設置されたシャツを写しとる為に立ったまゝの姿勢で、私の身体内の血流までも滞ってしまったのであった。第二の心臓である足の指から下肢のふくらはぎの周辺の血流の滞りは、私の身体に深刻な生きる為の流れを滞らせてしまうという影響を与えている。
しかし、そのような試練と状況を逆手にとって、それらとの関連の意味を考えながら益々トレースするという行為の意味が、私と自然の連携の関係の中で深まっていくことを感じた。
ひと筆ごとに鬼気迫るとはこのことか、などと考える昨今がある。
永遠に生きる為には過去を殺すというジレンマが生れる。
2017年7月25日
島 州一
Tracing-Shirt 231 2017 |