展覧会『原寸の美学』は終わったが、この展覧会が自分にとってどういう意味があったかを検証したいと思う。
今回の個展の初めに「影の梱包」の話があったのを機に、表現行為の2次元化の過程の検証をしようと思い立った。次元の変換をハッキリと自覚し実行を始めたのが、1980年の文化庁海外派遣研修の旅であった。それから約30年。
行為の痕跡のフロッタージュが次元の変換のきっかけであるとしたら、4次元を2次元の平面作品につくり換える行為がトレースである。
このコンセプトからフロッタージュとトレースの二本立てで会場を構成した。
トレースは独立した作品として存在するが、Finger Printのインスタレーションは会期後消えてしまう。自分が30年前の素材で現在をどのように表現したかを確かめたかった。
Finger Printの部屋
小諸高原美術館の浅間山連峰寄りの部屋をFinger Printでインスタレーションする。壁の左右中央の下側にCFPの箱(CFP46)を取り付け浅間山とし、そこから立ち昇る噴煙をFinger Print(N.Y.で制作、地下鉄の系統図をヒントにして色の帯の入るもの)で天井まで噴き上がり左右に拡がって行き、壁の両端で下って終わるようにした。
Finger Printの上に色のFinger Printを貼付け、さらにその上に色紙でつくったプラスのアイコンをCFPの箱の上や壁に貼付けた。
CFPの箱の中の構造は浅間山の地層を表現し、その箱の上に貼ったプラスのアイコンは、1970年の人類初の月面着陸の写真一面に配置されてあったゲージから着想したものである。これを私がインスタレーションのパターンとして採用した理由は、月という写真の情報を私が居ながらにして自分の現実として手元に引きつける道具であると理解したことから来ている。以上の理由から、日頃眺める浅間山をもっと自分の現実にしようと思った。
中央の壁の宇宙船から見た地球は、単色のFinger Printを使用して地球の風景をつくった。その上に色のFinger Printとプラスのアイコンを付加した。そして地球の中央、上部にかかるように宇宙船を設置し、その箱(CFP47)の上にもプラスのアイコンを貼った。
左側の壁の人間は真中にボディとなるFinger Printの箱(CFP&W44)があり、そこから首や手足がのびて気持ちよく片手を上げてあいさつをしている様子を表現した。
以上のインスタレーションで強く思ったことは、現代において30年前とは異なり、表現の質がより具体的になってきていると実感した。その理由は、現代がデジタル的傾向にあり、抽象的な事柄をよく斟酌推理するアナログ的な手続きをしなくなっているからだと気付いた。
2011年12月4日
島州一
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